【ミルテの花】

色とりどりの花が咲くこの時期にぴったりな作品をご紹介します!

シューマンの連作歌曲集《ミルテの花(Myrthen)》全26曲は、とても特別な意味を持つ歌曲集です。

タイトルにあるミルテ(myrtle)は、西洋で「結婚」や「純潔」「愛の象徴」とされる花。結婚式の花冠にもよく使われました。
つまり、《ミルテの花》は“結婚に寄せる花束のような歌曲集”という意味合いがあります。

各作品にはハイネ、ゲーテ、ルッケルトなど、ロマン派を代表する詩人の詩が使われています。
音楽的にも詩的にも、愛、夢、憧れ、孤独といった感情が繊細に表現されています。

シューマンはこの《ミルテの花》を、1840年の結婚前夜にクララへプレゼントしました。

なかでも第1曲「献呈(Widmung)」は、シューマンの深い愛情があふれる名曲。
「君はわが魂、わが心…君がもたらす幸せが、わたしの世界を変えた」と歌われるこの作品は、恋人やパートナーへの感謝の気持ちがストレートに、しかしとても詩的に表現されています。

大変有名なお話ですが、クララの父フリードリヒ・ヴィークは、クララとロベルトシューマン 二人の結婚に長く反対していました。才能あるピアニストである娘を、“ロマンチストの作曲家”に嫁がせることを恐れていました。(そんな父の心配はあながち間違いではなく、シューマンの精神の病にクララは大変悩まされる未来になりましたね…)
長い裁判も経て、ついに結婚の許しを得たその年、シューマンはこの歌曲集を完成させ、結婚前夜にクララへと贈ったのです。
「献呈」はその第1曲であり、彼の喜び、愛情、感謝、すべてが詰まったまさに“プロポーズの歌”とも言えます。

この「献呈」はその後、フランツ・リストによってピアノ独奏用にも編曲され、現在でもリサイタルや結婚式などで広く演奏されています。リストのアレンジでは、原曲のロマンティックな旋律に、さらに華やかな技巧が加わり、聴きごたえも満点です。

クラシック音楽には、このように人生の節目や感情を繊細に表現した名曲がたくさんあります。

ミナトミュージックサロンでは、クラシック歌曲やピアノの演奏を楽しく学んでいただけます。音楽に癒やされたい方、ぜひお気軽にご相談ください♪

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